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『生還。』

合格体験記
金子浩子

『生還。』

金子 浩子

埼玉県 川越女子高等学校出身

早稲田大学文化構想学部合格

身辺整理をして、家を飛び出したのが12月始め。死ぬつもりだった。受験に耐えられぬ自分は社会に出てやっていけるはずがない。せめて人に迷惑をかける前に死んだ方がいいと、そう思っていた。真っ白になった頭で電車に飛び乗る。

他から見れば決して悪い成績を修めていたわけではない。国語と英語の偏差値は70近くあったし、世界史もまずまずだった。
問題は自分の心にあった。高二のころ悪化した精神状態を、そのまま受験生活に持ち込んでしまっていたのだ。激しい憂鬱が時折襲い、勉強もままならなくなる。そして、その勉強できなかった事実が、さらに自分を追い詰める原因となってしまっていた。この悪循環は夏から急激に加速し、秋には学校に毎日行くことすら珍しくなってしまった。

なんとなく。私の行動理由はいつでもそれだ。はっきりした目的もなく、成り行きまかせ。
早稲田大学を受験しようと思ったのもなんとなくだし、勉強は計画も立てず適当にやっていた。その目的意識の無さが、自分を薄っぺらな人間にしているように思う。そしてそうであるという劣等感が、自分を苛む憂鬱となるのだ。

ふと気が付くと私は終電後の仙台にいた。どうやってそこについたのかうまく思い出せなかった。しかし真っ白だった頭は妙にクリアになっていて、自分の行動と思考には理性が戻っていた。
このままじゃいけない。帰らなければ。
始発電車をファミリーレストランで待つ間、自分はどこで間違ってこうなってしまったのかずっと考えていた。目的がなかったこと、誰にも相談しなかったこと、数え上げればキリがない。でも一番の原因は自分が弱かったことだと、そう結論づけた。しかし必要なのは、そういう自分を責めることではなく、強くなるための努力をすることだと、思い至った。

始発電車は薄暗い中、仙台駅を静かに出発した。人影もまばらな上り電車の車窓を、徐々に朝焼けが彩り始める。
強くなるためには、浪人しよう。今回失敗してしまったことを、やりなおそう。眠くなって来た頭の中でそんなことを考えていた。

学力はある程度ある。これ以上授業はいらない。だけれど一人で受験生活に耐えられる自信はない。欲しいのはサポートだ。そこで私は道塾に入塾することに決めた。
体験入塾のときには、完全に浪人するつもりでおり、今年は受験しないでもいいかなと思っていたが、馬場さんの説得もあり、早稲田だけでも受験することになった。ポジティブな言葉に救われた気がした。
とはいえ、落ちに落ちていた気分と学習意欲がすぐに回復するはずもなく、受験前日までなにもせずただ無為に日々を過ごしていた。再び受験しないという考えが頭をもたげていた、けれど、夜中に目覚めた意識の中からはいつの間にかそれが消えていて、気分もすっきりしていた。毎週の道塾への電話は、自分でもわからない部分で心を前に進める後押しとなっていたのだ。

そして今、私は新しい生活に期待を膨らませている。合格したのだ。第一志望の法学部には落ちてしまったが、文化構想学部に合格した。
強くなるために、浪人することを考えていたけれど、結局は逃げの考えであったのかもしれない。今回逃げずに受験しに行ったことは、強くなるための第一歩と考えることも出来る。これからは自分の心を強くするという目的を持って、勉学に励もうと思う。

道塾との出会いは、真っ暗な夜に射す一筋の朝日のようだった。

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